HOME | 最新号 PICK UP | EB48 | TOP INTERVIEW ㈱バンダイナムコアミューズメント 代表取締役社長 川﨑寛 氏

バックナンバー

TOP INTERVIEW

開発から運営まで一気通貫の体制を生かし、
オリジナルの価値を創造する

㈱バンダイナムコアミューズメント 代表取締役社長 川﨑寛 氏

 

㈱バンダイナムコアミューズメント代表取締役社長

経営体質の抜本的な改善と
開発と運営の連携が持続性を高める

 

――まず、コロナ禍における事業の状況はいかがでしょうか?

 
川﨑 バンダイナムコグループとしては、デジタル事業とトイホビー事業がコロナ禍の巣ごもり需要によって伸びてきました。コンシューマーゲームやアプリゲームの開発は3年から4年のスパンで行っており、コロナ禍のリモートワークでも順調に継続できています。ガンダムのプラモデルにしても日本国内で生産しており、アメリカでの販売が順調なことから生産が追いつかないぐらい好調です。
 
 一方、弊社が担うリアルなロケーションでのアミューズメント事業は回復の途上にあります。ゲームセンターでも地方の生活密着型のショッピングセンターの店舗に関しては、それほど大きく落ち込んでいません。今春にはコロナ禍以前の対2019年比で約90%まで売上が戻り、緊急事態宣言解除後はさらに集客が回復しています。クレーンゲームで極めてプレミア感の高い景品を投入するなどさまざまな施策が功を奏しました。
 
 ただ、繁華街の店舗はなかなか数字が上がりません。緊急事態宣言が解除されて間がないこともあり、夜の繁華街の人出が十分に回復していないことが要因です。コロナ禍以前は、会社帰りや飲み会の後にゲームセンターで遊んでいたサラリーマンがいました。その層に人気のアーケードゲーム「機動戦士ガンダム 戦場の絆」もコロナ禍以前のピークタイムは夜の8時でした。緊急事態宣言が明けたといっても、まだ深夜や朝まで遊ぶ雰囲気ではないですから、その層が一向に戻っていません。海外からのインバウンド消費もまだ失われたままです。

 弊社では「ナンジャタウン」「花やしき」などのテーマパーク、「VS PARK」や「SPACE ATHLETIC “TONDEMI”(トンデミ)」といった屋内型プレイパーク、体験型トイショップの「ハムリーズ」などの大型施設を展開しています。こういった非日常的な遊びを楽しむ施設は収益を担保するまでには至っていませんが、VS PARKは週末になると入場制限をするほどお客様に来ていただいています。
 

――業績回復に向けてどのような取り組みをされていますか?

 
川﨑 私は今年4月に社長に就任しましたが、萩原前社長の時期から固定費の圧縮を含めて経営体質の改善を図ってきました。今後、ふたたびコロナ禍に見舞われたとしても耐えられる会社にすることを目指したのです。その甲斐があって、売上が十分に戻っていなくても、利益を出せるようになりました。安定的に収益を出し、次の投資に向けてキャッシュフローを回復し、存続していける会社にする。それが経営者としての私の使命です。
 
 弊社はリアルエンターテインメント事業に関する製品開発から運営までを一気通貫するべくグループ内の部署が統合し、2018年4月に設立されました。3年が経過した今、有機的な連携が活発化しています。統合以前は外部のゲームセンターを主眼にゲーム開発をしていましたが、現在は200店舗に及ぶ直営のゲームセンターで何が必要とされているかを主軸に置いて開発が進められています。店舗からお客様の声を開発部門に直接、フィードバックできることで、弊社の人気ゲームである「太鼓の達人」「マリオカート アーケードグランプリDX」「釣りスピリッツ」といったタイトルについても、自社グループの店舗が求める方向性で次の製品開発ができるのです。数少ないメーカー兼オペレーターとして、その強みは存分に発揮していきたいです。

屋内アスレチック施設「SPACE ATHLETIC“TONDEMI”」

昨年から急速に出店を続け話題を集める「ガシャポンのデパート」

業界全体を盛り上げるのは
各社の独自性による切磋琢磨

 

――グループ全体としてはどのような点に注力されていくのでしょうか?

 
川﨑 バンダイナムコグループではかねてより、「IP軸戦略」を打ち出しています。例えば、ガンダムというI Pを最大化するための製品開発やイベント、ファンとのコミュニケーションはどうあるべきか? そこを軸にして考え、「デジタル事業」と「トイホビー事業」が「エンターテインメントユニット」を構成し、IPの価値最大化を図っていきます。弊社は「アミューズメントユニット」として、IPのリアルな出口を担っていきます。
 

――ショッピングセンターのゲームセンターなどでもI P軸戦略がウエイトを占めていくのでしょうか?

 
川﨑 現在、弊社のゲームセンターの売上は6~7割をクレーンゲームが占めています。クレーンゲームのファンは景品が動機ですので小売業に近いですが、単純にお金を払ってモノを買うのではない「体験型物販」です。ですから、キャラクターといかに触れ合えるか、ファン同士のコミュニテイの場をどのように作れるかなど体験性を高めていくことが重要です。
 
 同時に魅力的なIPで景品を開発し、提供していくことを強化していきます。クレーンゲームの場合、かなりのスピードで景品を製品化することが可能です。ですから、次に求められるIPに関する調査は常に行っています。バンダイナムコグループのIPはもちろんですが、他社のIPに関してもアンテナを張り、製品化します。限定景品もかなりの頻度でリリースするので、ショッピングセンターの集客にも貢献できるはずです。

――VS PARKなどの大型施設はショッピングセンターでの評価が高いですね。

 
川﨑 デジタルゲームは主に視覚と聴覚、そして脳を使って遊びます。一方で、V S PARKやTONDEMIは汗をかき、筋肉を使います。リアルなロケーションならではの体験です。事業としての収益性はまだまだ成長の余地がありますが、リピート客がとても多く、その点もショッピングセンターから評価されている要因です。社内でも100坪を超える大型の案件に対応できる施設を提案できるようになったこれらの施設は高く評価しています。
 
 弊社にはリアルエンターテインメントに特化した製品開発を担う子会社の㈱バン
ダイナムコアミューズメントラボがありますが、VS PARKは同社からの発案でした。猛獣と競争する「ニゲキル」や避け回る「ヨケキル」というアトラクションが発案され、それらを実現するには大型施設が必要という発想が生まれたのです。そのほか、海外企業など他社からの遊戯機器の調達とローカライズもグループ企業の㈱バンダイナムコテクニカが手がけています。大型施設のアトラクションを自社グループでラインナップし、運営までトータルでプロデュースできていることは大きなアドバンテージであると思います。TONDEMIについても運営ノウハウの確立が進んでいます。すべてでいえることですが、とりわけ宣伝に関しては、継続的な情報発信が必要です。予算を抑えながらいかに効果的なプロモーションを図っていくか。その知見が事業として蓄積されています。
 
 VS PARKとTONDEMIについては、国内に主要なエリアに展開しつつ、海外にパッケージとして販売していく仕組みを作っていければと考えています。また、新たな業態の開発も視野に入れています。
 

――今後、アミューズメント業界にとってどのような点が重要になりますか?

 
川﨑 弊社のミッションは新たな価値提供をしていくことです。そのためには複数年で事業をプロデュースする姿勢が重要です。長年、装置産業として事業を捉えてきた慣習で成果が出ないとすぐに撤退するケースが多くありました。立地やコンテンツ、仕入れなどの要因を分析し、適正な方向へと導く経営が重要だと考えます。
 
 業界全体で言えば、それぞれのオペレーターがオリジナリティを際立たせることが大切です。私たちもバンダイナムコらしさを追求したいと考えています。
 
 弊社でも数多くのI Pを商品化していますが、近年はキャラクターの版権元がどこか1社に独占的な権利を与えて、商品化を一任することなどありません。すべてのメーカーやオペレーターに許諾を与えるのです。一社だけに任せると良いモノが生まれないからです。競争原理のなかで各社が「うちだったら、こんな面白い商品が作れます!」と競う合うことで結果としてキャラクターの人気が高まり、お客様に愛され続けるのです。
 
 アミューズメントも同じだと思います。コモディティ化される部分も業界発展に寄与すると思うが、各社がオリジナリティを追求し、切磋琢磨することが結果として、業界全体の底上げを図っていくのだと思います。
 

――ありがとうございました。

デジタルとスポーツが融合した「VS PARK」

  エンタメ関係者必見!!