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越後妻有 大地の芸術祭 2022

棚田に農作業をする詩型をかたどった彫刻が置かれた「棚田」(イリヤ&エミリア・カバコフ)

 

パンデミック乗り越え
秋まで3シーズン通しで開催中

 「越後妻有 大地の芸術祭 2022」(大地の芸術祭)が開催中だ。今年8回目を迎える大地の芸術祭は3年ごとに開催され、本来なら昨年夏の予定であったが、新型コロナ感染症拡大により延期となっていた。今回は感染症対策もあり、春から秋にかけての3シーズン開催となり、会期期間は4月29日から11月13日までの145日間というロングランとなった。通し開催により混雑が緩和され、訪れる人にとってはゆっくりアート観賞ができることになったが、毎週火曜、水曜が定休日となるため、訪れる際は注意が必要だ。
 
 開催内容をみると、前回以上に見応えのある作品がラインナップされている。作品数333点のうち123点が新作。コロナ禍にありながらもこれだけの新作を制作・展示することができたのは、作家、サポーター、主催者の並々なら努力の結果だろう。
 
 主な新作品をあげると、十日町エリアでは「越後妻有里山現代美術館MonET」に展示されている「Force」(名和晃平)、「16本のロープ」(イリヤ&エミリヤ・カバノフ)、「エアリエル」(ニコラ・ダロ)、「Resounding tsumari」(マルニクス・デネイス)など。松城エリアでは、松代城の「憧れの眺望」(エステル・ストッカー)、「楽聚第」(豊福亮)、「脱皮する時」(鞍掛純一+日本大学芸術学部彫刻コース有志)は必見だ。そのほか「手をたずさえる塔 手をたずさえる船」(イリヤ&エミリヤ・カバノフ)など注目作品が目白押しである。さらに川西、中里、松之山、津南の各エリアにも新作が展示されている。
 
 大地の芸術祭の特徴は作品が十日町市、津南町の全域(面積約760㎡、東京23区を上回る)に展示されていることで、作品廻りに時間を要する。そのため、道に迷わず効率よく作品を見たいのであれば公式ガイドブックは必須となろう。
 
 依然コロナ禍にある都会での窮屈な生活をいっとき離れ、自然の息吹を肌で感じながらのアート観賞は他にはない貴重な体験となる。以前訪れたことのあるリピーターでも季節が違えば新たな発見があるだろうし、アートにそれほど関心がない人でも何かしら得るものがあるにちがいない。できれば2泊3日以上、ゆとりをもって訪れるみつことをお勧めする。

逆さ吊りされた巨大な鉛筆の「リバース・シティ」(写真左、パスカル・マルチィン・タイユー)、ランドマークとして制作された「〇△□の塔と赤トンボ」(田中信太郎)

絵画のフレームに見立て、左右に2つの椅子が置かれた「米の家」(チャン・ユンホ[張永和]+非常建築)
 

自転車を漕ぐと後方の自転車が回わりだす「回転する不在」(東弘一郎)

黒いシリコーンオイルが無数の板状となって天井から床に落ちる「Force」(名和晃平)

回廊に囲まれた池の水面に空と建物が反射する「Palimpsest:空の家」(レアンドロ・エルリッヒ)。池の床面に鏡像の絵が張り込まれ、実像を重なり合う